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転倒して手をついた後、手首が腫れて痛むときに知っておきたいこと
段差でつまずいて手をついた後、手首が腫れて動かすたびにズキッとする。受診すべきか迷う方は少なくありません。転倒後の手首の痛みは、見た目や動かせるかどうかだけでは骨折かどうかを見分けにくいことがあります。この記事では受診を考える目安、自宅でできる応急処置、整形外科での検査の流れを整形外科医の視点で整理しました。
この記事の要点まとめ
- 変形や強い腫れ、しびれがみられる場合は骨折の可能性も考えられ、早めの受診が勧められます
- 応急処置ではRICE処置を行い、無理に動かしたり温めたりしないことが大切です
- レントゲンやエコーで骨・軟部組織を確認し、状態に応じた治療方針を検討します
転倒後の手首の痛みが骨折か捻挫かを見極める症状の目安

転んで手をついた直後は「たぶん捻挫だろう」と考えがちです。ただ手首は小さな骨と靭帯が密集した部位で、外見だけで区別するのは簡単ではありません2。受診を考える手がかりとなる症状を整理しておきましょう。
手首の明らかな変形や強い腫れ・内出血がある場合の特徴
手首の形が左右で違う、フォークの背のように盛り上がって見える。こうした変形があるときは、骨のずれを伴う損傷が疑われます。数十分〜数時間で腫れが広がる、手の甲や前腕にかけて紫色の皮下出血が出るといった変化も見過ごしたくないところです。
- 手首の輪郭が左右で明らかに違う
- 押すと一点に強い痛み(圧痛)が集中する
- ペンや箸など軽い物も持ちにくい
変形や強い腫れを伴うときは、自己判断で様子を見ず、早めに整形外科へご相談ください。
「動かせるから大丈夫」は誤解?痛みが続く時の注意点
ヒビ(不全骨折)やずれの小さい骨折では、痛みをこらえればある程度動かせてしまう場合があります。なかでも親指の付け根に近い舟状骨骨折は腫れが目立ちにくく、初期のレントゲンでも判別しづらいことが知られています。
受傷から1〜2日たっても痛みが変わらない、握る動作や手をつく動作で鋭い痛みが走る、夜間もズキズキする。こうしたときは、動かせるかどうかにかかわらず画像検査で状況を確認しておくことが勧められます1。
橈骨遠位端骨折や舟状骨骨折など転倒時に起こりやすい損傷
手をついて転んだときに生じやすい代表例が、前腕の骨の手首側が折れる橈骨遠位端骨折です。閉経後の女性や高齢の方では骨密度の低下を背景に、軽い転倒でも起こることがあります2。一方、若い世代やスポーツ中の転倒では舟状骨骨折の割合が相対的に高まる傾向が指摘されています。
このほか靭帯損傷やTFCC(三角線維軟骨複合体)損傷など、骨以外の組織が傷つく場合も珍しくありません。同じ「転んで手首が痛い」でも、背景にある損傷は一つではないという点を押さえておきたいところです。
受診前に行う手首の痛みを悪化させないための応急処置手順

診療時間まで待つ間、あるいは夜間に受傷したとき。家庭でできる初期対応があります。判断がつかない段階では、「骨折しているかもしれない」という前提で扱うのが基本の考え方です。
患部を動かさず冷やすRICE処置の基本ステップ
外傷の初期対応としてよく用いられるのがRICE処置です1。
- 安静(Rest):手首を使う動作を控え、家事も一時的に中断する
- 冷却(Icing):氷嚢や保冷剤をタオルで包み、15〜20分を目安に当てる。凍傷を避けるため直接肌に当てず、間隔をあけて繰り返す
- 圧迫(Compression):腫れを抑える目的で軽く包帯を巻く。指先が白くなる、しびれる場合はきつすぎるサイン
- 挙上(Elevation):クッションなどで手首を心臓より高い位置に保つ
市販の痛み止めを使う際は、持病や服用中のお薬との兼ね合いがあります。医師や薬剤師に一声かけてから使うとよいでしょう。
身近なタオルや段ボールを活用した手首の簡易固定法
専用の副子(シーネ)がなくても代用は可能です。手首から手のひらまでを支えられる厚紙や段ボール、丸めた雑誌を手のひら側に当て、包帯やタオルで軽く巻き付けます。手首は無理に伸ばさず、受傷したときに最も痛みが少ない角度のまま保つのがポイントです。
大判のスカーフやバスタオルを三角巾代わりにして腕を吊ると、移動中の揺れを抑えやすくなります。指先は出しておき、色や感覚に変化がないか時々確かめましょう。
無理に引っ張らない・温めない!初期対応で避けるべき行動
変形が気になっても、自分で骨の位置を戻そうと引っ張ったりねじったりするのはお控えください。周囲の神経や血管に負担がかかる可能性があります。受傷直後の入浴・飲酒・マッサージも腫れが強まることがあるため、当日はシャワーで済ませるなどの配慮が望まれます。
「どこまで動くか」を何度も確かめる行為も、損傷部位への負担になります。確認は最小限にとどめ、固定したうえで受診するのが現実的な進め方です。
放置は禁物?受診すべき判断基準と整形外科での検査・治療の流れ
「受診して捻挫と言われたら気まずいのでは」と迷う方もいらっしゃいます。けれど、骨に異常がないと確認できること自体に意味があります。仕事や家事の予定を組むうえでも、早い段階で状態を把握しておくほうが動きやすくなるでしょう。
早急に整形外科を受診すべき緊急度の高いサイン
次のような状態がみられる場合は、当日〜翌日を目安に医療機関へご相談ください12。
- 手首や指に明らかな変形がある
- 指先のしびれ、感覚の鈍さ、冷たさ、色の変化がある
- 安静にしていてもズキズキと強い痛みが続く
- 手をついたり物を握ったりする動作ができない
- 骨粗しょう症を指摘されたことがある、閉経後で骨密度が気になる
高齢の方や閉経後の女性は、軽い転倒でも骨折が起こり得ます。痛みが引かないときは一度ご確認いただくと、その後の対応を考えやすくなります。
レントゲンや超音波(エコー)検査による骨・軟部組織の確認
整形外科では、まず受傷時の状況と痛みの部位をうかがい、必要に応じてレントゲン撮影を行います。ヒビや舟状骨骨折は受傷直後の画像に写りにくいことがあり、日数をおいて再撮影したり、CTやMRIでの精査を検討したりする場合もあります。
当院では超音波診断装置(エコー)を備えており、骨の表面の状態に加え、靭帯や腱といった軟部組織の様子もその場で観察できます。骨密度測定装置(DEXA:全身性)も導入しているため、骨折を繰り返しやすい背景要因の確認にも役立てています。当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた診療を行えるよう、治療前の検査を重視しています。
ギプス固定などの保存的治療と日常生活へ復帰するまでの目安
骨のずれが少ない場合はギプスやシーネによる保存治療が選ばれることが多く、固定期間はおおむね4〜6週間程度が一つの目安とされます(骨折の型や年齢により幅があります)。ずれが大きい場合や関節面に及ぶ場合には、手術治療を含めた選択肢をご相談することになります2。
固定を外した後も、手首の動きや握力に向けたリハビリテーションを行うのが一般的です。当院は広々としたリハビリルームを備え、リハビリにも力を入れています。家事や仕事への復帰時期は状態によって異なりますので、自己判断で固定を外さず、経過をみながら段階的に進めていきましょう。
よくある質問
Q1. 骨にひびが入ったかどうかは、自分で判断できますか?
A. 見た目や動かせるかどうかだけで見極めるのは難しいとされています。押すと一点に強い痛みがある、腫れが引かない、痛みが数日続くといったときは、画像検査でご確認いただくことをおすすめします。
Q2. 手首の打撲と骨折の見分け方はありますか?
A. 打撲では時間とともに痛みが和らいでいく傾向がありますが、骨折では体重をかけたり握ったりする動作で鋭い痛みが続く場合が多いとされます。ただし例外もあるため、あくまで目安としてお考えください。
Q3. 手首の骨折はレントゲンで分かりますか?
A. 多くの骨折はレントゲンで確認できるとされています。ただ舟状骨骨折や細いヒビは受傷直後に写らないことがあり、その場合は日数をおいた再検査や、超音波・CT・MRIなどを組み合わせて評価します。
Q4. 受診するのは整形外科でよいのでしょうか?
A. 転倒による手首の痛みは整形外科が対応する領域です。骨折の型が複雑な場合や手の細かい機能に関わる場合は、手の外科を扱う医療機関へご紹介することもあります。
Q5. 痛みが軽ければ数日様子を見てもよいですか?
A. 軽い痛みでも、腫れが増している、指先にしびれがある、握力が明らかに落ちているといった変化があるときは早めのご相談をおすすめします。迷う段階でお声がけいただいて構いません。
参考文献
1. 日本医師会. https://www.med.or.jp/
2. 公益社団法人 日本整形外科学会. https://www.joa.or.jp/
1999年~ 仙台市立病院 外科
2002年~ 横浜市立大学市民総合医療センター 整形外科
2003年~ 水野病院 整形外科
2009年~ 本牧病院 整形外科
2017年~ 北砂2丁目だい整形外科 開設
江東区医師会・防災部会部員
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