
目次
膝の軟骨が減る背景には複数の要因が重なっています
変形性膝関節症で軟骨がへるのは年をとったからだけではなく、体重や昔のけが、ひざの形、太ももの力などが重なって起こります。年のせいだとあきらめたり、これまでの暮らしを責めたりする必要はありません。この記事では、軟骨のかわり方と痛みのつながり、仕事や買い物でひざを守る動き方、運動と休み方の決め方、整形外科へ相談する目安をまとめます。
この記事の要点まとめ
- 膝の軟骨がへる背景には、年齢のほか体重、昔のけが、脚の形、筋力など、いくつもの要因が関わります。
- 運動は翌日に痛みが残らない範囲で行い、しゃがむ動きや荷物を運ぶときは動き方を工夫して、膝への負担をへらします。
- 腫れや熱っぽさ、長びく痛みがあるときは整形外科へ相談し、膝の状態や対応のしかたを確かめましょう。
変形性膝関節症で軟骨が減る原因は加齢だけではない

膝の軟骨がすり減る背景には、年齢だけでなく体重、性別、過去のけが、脚の形、筋力といった複数の要因が関わっています12。年齢を重ねることは変えられなくても、体重や筋力、日々の動作はこれから働きかけられる要素です。検索の情報だけで原因や病名を決めつけることはできないため、まずはどのような要因が関わるのかを整理していきましょう。
軟骨のすり減りと膝の痛みは一致しないこともある
膝関節軟骨(骨の表面を覆うクッション)そのものには、神経がほとんど通っていません。痛みは、すり減った軟骨の破片によって関節を包む膜に炎症(滑膜炎)が起きたり、半月板や軟骨の下にある骨へ負担がかかったりすることで生じます。
そのため、レントゲンで見える軟骨のすりへり方と、じっさいに感じる痛みの強さがそろわないこともあります。年をとって起こる自然な軟骨のかわりなのか、治療がいる変形性膝関節症なのかは、画像の見た目だけでなく、腫れや痛む動きもあわせて医師が見きわめます。
年齢や体重が重なると負担が増える理由
加齢に加えて、過体重や肥満、女性であることも発症に関わる要因とされています。多くは軟骨の老化がもとになり、そこに肥満や生まれつきの体質も関わります3。年齢とともに軟骨の水分を保つ力が落ちるうえ、体重が増えると歩くときや階段の上り下りで膝にかかる負荷が大きくなるためです。
膝が痛むからと外出を控えると、活動量が減って体重が増え、さらに膝が痛むという循環に陥りやすくなります。これは身体の仕組みとして起こりやすい変化であり、ご自身の生活を過度に責める必要はありません。
過去の靱帯損傷や半月板損傷が年月を経て影響することも
過去に負った靱帯損傷や半月板損傷などの膝のけがは、年月を経てから変形性膝関節症のリスクを高める要因になります2。けがによって関節の安定性がわずかに変わると、特定の場所へ負担が偏りやすくなるためです。
「40代の頃に膝の靱帯を傷めた」「昔、膝が腫れて水を抜いたことがある」といった経験は、現在の痛みの背景を探る手がかりになります。診察を受ける際は、昔のけがであっても医師へ伝えておくことが大切です。
O脚と太ももの筋力低下が膝の内側に負担を集める
日本人に多いO脚(立ったときに両ひざの間があく脚の形)では、体重が膝の内がわにかたよってかかりやすくなります。そこへ大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)などの力が弱まると、着地のショックを筋肉で受けとめきれず、内がわの軟骨へ負担が集まります。
骨格や脚の形そのものを自力で変えるのは難しくても、太ももの筋力は運動不足の見直しによって支える力を養えます。自分で調整できる要素に目を向けることが、膝を守る第一歩になります。
膝への負担を減らす日常の工夫と、運動・休息の調整法
膝の痛みをかかえながら仕事や家事、ご家族の付きそいを続けるには、関節にかかるショックをちらす工夫が役立ちます。運動や暮らし方の知識を取り入れることは、体を動かす量を保ち、痛みをやわらげることに関わると報告されています4。毎日の暮らしを一律にがまんするのではなく、負担の少ない動き方へ置きかえていきましょう。
「痛いから歩かない方がいい」はよくある誤解
「膝が痛いなら歩かない方がいい」と思われがちですが、ウォーキングなどの運動が一律に禁止されるわけではありません。痛みが強くならない範囲で体を動かすことと、膝との付き合い方を学ぶことを組み合わせると、体を動かす量がふえ、痛みがやわらぐことにつながります。
反対に、痛みがこわくて動かない時期が長びくと、筋肉の力が落ちて関節がぐらつきやすくなり、体重もふえて負担が大きくなってしまいます。クッションのきいた靴を選び、平らな道を短い時間から歩くなど、やり方を変えながら動くくせを続けることが大切です。
品出しのしゃがみ込みや荷物運びで膝を守る動作の工夫
立ち仕事での作業や買い物では、膝を深く曲げる動作と重い荷物を持つ場面で負担が集中します。日常の動作を次のように変えるだけでも、膝への負荷を減らしやすくなります。
- 低い場所の作業:深くしゃがみ込まず、片膝を床につくか低い台に腰を下ろす
- 立ち上がり:机や棚、手すりに手をついて腕の力も使いながらゆっくり立つ
- 荷物運び:荷物は身体に近づけて持ち、左右の手に分けるかカートを利用する
- 階段の昇り降り:手すりを使い、上りは痛くない方の脚から、下りは痛い方の脚から一段ずつ揃えて踏み出す
すべてを完璧に行おうとせず、職場の品出しや買い物の付き添いなど、毎日繰り返す場面から一つずつ取り入れてみてください。
痛みの出方で決める、運動を続ける日と休む日の目安
活動量を調整する際は、「翌日に痛みが残るかどうか」が目安になります。動いた後に少し違和感があっても、翌朝には元の状態に戻っているなら、その運動量は現在の膝に合っていると判断しやすくなります。
もし翌日まで痛みが強く残る場合や、膝に腫れ・熱っぽさが出た場合は、運動の量を半分に減らすか一度休んで様子を見ます。立つ・歩く動作がつらい時期でも、椅子に座ったまま片脚を水平に伸ばして5秒ほど保つ太ももの運動なら、膝に体重をかけずに筋肉へ働きかけられます3。
体重管理は「まず少し減らす」から始める
体重は膝への負担に関わる要因の一つですが1、短期間で大幅に減らそうとすると体調を崩したり、筋肉まで落ちてしまったりすることがあります。まずは現在の体重から1〜2キロ、あるいは数パーセント減らすといった小さな目標から始めるのが現実的です。
間食の回数を見直す、たんぱく質や野菜を意識して摂るといった食事の工夫に、膝に負担の少ない運動を組み合わせていきます。長く続けられるペースを見つけることが、結果として膝を守ることにつながります。
ポイント
運動は翌日に痛みが残らない範囲で続け4、深いしゃがみ込みや重い荷物運びは手すりやカートを使って負担を逃がす工夫を取り入れましょう。
膝の痛みで整形外科に相談する目安と、診察で確かめること
膝の痛みが年齢による変化なのか、治療がいる状態なのかを、自分で見分けるのはむずかしいものです。痛みが長びくときは、一度整形外科で関節の様子を確かめておくと、仕事や暮らしを続けるための見通しを立てやすくなります。
腫れ・熱っぽさ・膝の皿の下の痛みが続くときは早めに相談を
次のような症状があるときは、我慢を続けずに整形外科へ相談する目安になります。
- 膝が腫れている、触ると熱っぽい感じがある
- 膝の皿(膝蓋骨)の下あたりや内側が、立ち上がりや階段で痛む
- 湿布を貼っても痛みが引かず、2〜3週間以上続いている
- 歩ける距離が以前より短くなり、買い物や外出がおっくうになってきた
- 膝を動かすと引っかかる感じがする、急に力が抜けて崩れそうになる
特に膝の皿の下が痛む場合は、変形性膝関節症だけでなく腱の炎症や半月板の問題など、別の原因が関わっていることもあります。痛む場所と動作を診察で確かめることが、原因を見極める手がかりになります。
問診・診察・レントゲン・超音波検査で確かめること
初診では、いつから・どんな動作で痛むか、立ち仕事などの生活背景、過去に膝のけがをしたことがあるか2を問診で確認します。そのうえで医師が膝に触れ、腫れや関節の動く範囲、痛む場所を確かめます。
画像検査としては、骨の変形や関節のすき間を見るX線(レントゲン)検査のほか、関節の中に水がたまっていないか、腱や靱帯などの軟部組織に変化がないかをその場で調べる超音波検査が用いられることもあります。骨の強さを調べる骨密度測定や、半月板などを詳しく見るMRI検査が必要に応じて検討される場合もあります。なお、整形外科の初診で診察とレントゲン検査などを受ける場合、公的医療保険の適用(3割負担)で2,000〜4,000円程度が一般的な相場です。記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関や検査内容により異なります。
受診しても仕事や運動を一律に止められるわけではない
「病院に行くと、仕事や運動を止められるのではないか」とためらう患者さんもいますが、生活のすべてを一律に制限するわけではありません。変形性膝関節症の対応は、手術をしない保存療法から始めることが一般的です。
症状が軽いときは、痛み止めの飲み薬やぬり薬・貼り薬を使ったり、膝の関節にヒアルロン酸を注射したりします。あわせて太ももの筋肉をきたえる運動や、膝の動く範囲を広げる運動、膝を温める物理療法などのリハビリを行います3。なお、注射のあとは、注射したところが一時的に痛んだり腫れたりすることがあります。
また、ご自身の血液から血小板を含んだ成分を取り出して膝の関節に注射するPRP(多血小板血漿)療法などの再生医療は、公的医療保険が使えない自由診療です。一般的には、注射は日帰りで行い、その後の経過を見ながら効果を確かめていきます。回数や費用は医療機関や治療の内容によって大きく異なるため、保険診療の薬やリハビリとの違いも含めて説明を受け、納得してから決めることが大切です。
起こりうることとして、血液をとったところの感染や神経の損傷、注射したところの一時的な腫れや痛みなどがあります5。進行の速さは一人ひとり異なるため、早めに状態を知っておくことが、仕事を続けながら無理なく対処する助けになります。
痛みへの対応から、自分の足で歩き続けるためのリハビリへ
目の前の痛みを和らげることはもちろん大切ですが、その先にある「痛みを繰り返さない身体づくり」も欠かせません。股関節や足首の硬さ、歩き方の癖など、膝に負担を集めている背景まで目を向けて運動器を整えていく視点が求められます。
自分で歩いて買い物に行ったり、ご家族と外出したりする生活を長く続けていくために、膝の違和感が気になるときは早めに整形外科でご自身の膝の状態を確かめてみてください。
よくある質問
Q1. 変形性膝関節症を完治させる方法はありますか?
A. 一度すり減った膝の軟骨を元の状態へ完全に戻すことは、現在の医療では難しいとされています。ただし、軟骨がすり減っていても痛みが出にくい状態を目指すことはできます。薬3や運動療法、日常動作の工夫によって痛みをやわらげ、日常生活を続けやすくする工夫ができます4。
Q2. 変形性膝関節症は進行するまで何年かかりますか?
A. 進行の速さには個人差があり、何年でどの段階まで進むかを一概に決めることはできません。年齢や体重、O脚の程度、過去の膝のけが、日常での膝への負担のかかり方などによって経過が変わるため12、定期的に状態を確認しながら対処していくことが勧められます。
Q3. 変形性膝関節症になりやすい人はどのような特徴がありますか?
A. 中高年の方や女性、体重がふえている方は、なりやすいと報告されています。また、昔ひざのじん帯や半月板をいためたことがある方、O脚ぎみの方、太ももの力が落ちている方もなりやすいとされます。いくつかの要因が重なっているときは、早めに動き方や筋力を見直すことが大切です。
Q4. 変形性膝関節症ではウォーキングは控えた方がよいですか?
A. 一律に控える必要はありません。適度な歩行や運動は、関節を支える筋力を保ち、痛みの軽減にも関わることが示されています4。ただし、膝が強く腫れているときや、歩いた翌日まで痛みが強く残るときは距離や時間を減らし、痛みの出ない範囲で調整しながら行うことが基本です。
参考文献
1. Dong Y, Yan Y, Zhou J et al. Evidence on risk factors for knee osteoarthritis in middle-older aged: a systematic review and meta analysis. Journal of orthopaedic surgery and research. 2023. PMID: 37641050 / DOI: 10.1186/s13018-023-04089-6
2. Whittaker JL, Losciale JM, Juhl CB et al. Risk factors for knee osteoarthritis after traumatic knee injury: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials and cohort studies for the OPTIKNEE Consensus. British journal of sports medicine. 2022. PMID: 36455966 / DOI: 10.1136/bjsports-2022-105496
3. 「変形性膝関節症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html
4. Sasaki R, Honda Y, Oga S et al. Effect of exercise and/or educational interventions on physical activity and pain in patients with hip/knee osteoarthritis: A systematic review with meta-analysis. PloS one. 2022. PMID: 36409668 / DOI: 10.1371/journal.pone.0275591
5. 再生医療センター | 獨協医科大学病院. https://www.dokkyomed.ac.jp/hosp-m/department/consultation_organization/181
1999年~ 仙台市立病院 外科
2002年~ 横浜市立大学市民総合医療センター 整形外科
2003年~ 水野病院 整形外科
2009年~ 本牧病院 整形外科
2017年~ 北砂2丁目だい整形外科 開設
江東区医師会・防災部会部員
あわせて読みたい関連記事
